り変る自然の面影は、其日※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]其月※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]の趣を、初めて落着いて田舎に住む彼等の眼の前に巻物《まきもの》の如くのべて見せた。彼等は周囲《あたり》の自然と人とに次第に親しみつゝ、一方には近づく冬を気構えて、取りあえず能うだけの防寒設備をはじめた。東と北に一間の下屋《げや》をかけて、物置、女中部屋、薪小屋、食堂用の板敷とし、外に小さな浴室《よくしつ》を建《た》て、井筒《いづつ》も栗の木の四角な井桁《いげた》に更《か》えることにした。畑も一|反《たん》四|畝《せ》程買いたした。観賞樹木も家不相応に植え込んだ。夏から秋の暮にかけて、間歇的《かんけつてき》だが、小婢《こおんな》も来た。十月の末、八十六の父と七十九の母とが不肖児の田舎住居を見に来た時、其前日夫妻で唖の少年を相手に立てた皮つきのまゝの栗の木の門柱は、心ばかりの歓迎門として父母を迎えた。而してタヽキは出来て居なかったが、丁度彼の誕生日の十月二十五日に浴室の使用初《つかいぞめ》をして、「日々新」と父が其《その》板壁《いたかべ》に書い
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