繋《つな》いで置いたら、頸《くび》に縄きれをぶらさげながら、一週間ぶりに舞《ま》い戻《もど》った。隣字の人に頼んで、二子在の犬好きの家へ世話してもらうつもりで、一先ず其家に繋いで置いてもらうと、長い鎖《くさり》を引きずりながら帰って来た。詮方《せんかた》なくて今は其まゝにしてある。余が口笛《くちぶえ》を吹《ふ》いたら、彼女《かのじょ》はふっと見上げたが、やがて尾を垂《た》れて、小さな足跡《あしあと》を深く雪に残しつゝ、裏の方へ往って了うた。
 雪はまだしきりに降って居る。
 余は思うともなく今年一年の出来事をさま/″\と思い浮《うか》べた。身の上、家の上、村の上、自国の上、外国の上、さま/″\と事多い一年であった。種々の形《かたち》で世界の各所《かくしょ》に現《あら》わるゝ、人心《じんしん》の昂奮《こうふん》、人間の動揺が、眼《め》まぐろしくあらためて余の心の眼に映《うつ》った。
 何処《どこ》に落着く世の中であろう?
 余は久しく久しく何を見るともなく雪の中を見つめる。
 大正元年暮の二十九日は蒼白《あおじろ》う暮れて行く。
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おのがじし舞ひ狂ひつるあともなし

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