好い程の明《あかり》になった。颯《さあ》と云う音がする。轟《ごう》と云う響《ひびき》がする。風が出たらしい。四時やゝ廻《まわ》ると、妻が茶《ちゃ》を点《い》れ、鶴子が焼栗《やきぐり》を持て入って来た。
「雪水《ゆきみず》を沸《わ》かしたのですよ」
と妻が曰《い》う。ペンを擱《さしお》いて、取あえず一|碗《わん》を傾《かたむ》ける。銀瓶《ぎんびん》と云う処だが、やはり例《れい》の鉄瓶《てつびん》だ。其れでも何となく茶味《ちゃみ》が軟《やわら》かい。手々《てんで》に焼栗を剥《む》きつゝ、障子をあけてやゝしばし外を眺める。北から風が吹いて居る。田圃《たんぼ》向《むこ》うの杉の森を掠《かす》めて、白い風が弗《ふっ》、弗《ふっ》と幾陣《いくしきり》か斜《はす》に吹き通る。庭の内では、蛾《が》の如く花の様な大小の雪片《せっぺん》が、飛《と》んだり、刎《は》ねたり、狂《くる》うたり、筋斗翻《とんぼがえり》をしたり、ダンスをする様にくるりと廻《まわ》ったり、面白そうにふざけ散らして、身軽《みがる》に気軽《きがる》に舞うて居る。消えかけて居た雪の帽が、また地蔵の頭上に高くなった。庭の主貌《あるじがお》し
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