な高慢《こうまん》であろうが、同じ生類《しょうるい》の進むにも、鳥の道、魚の道、虫《むし》の道、また獣《けもの》の道もあることを忘れてはならぬ。
 吾儕《われら》は奇蹟を驚異し、透視《とうし》の人を尊敬し、而して自身は平坦な道をあるいて、道の導く所に行きたいものである。

           *

 夜、鶴子《つるこ》が炬燵《こたつ》に入りながら、昨日東京客からみやげにもらった鉛筆で雑記帳にアイウエオの手習《てならい》をしたあとで、雑記帳の表紙《ひょうし》に「トクトミツルコノデス」と書き、それから
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コイヌガウマレマシテ、カワイコトデアリマス
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と書いた。これは鶴子女史が生れてはじめての作文だ。細君が其下に記憶の為「ゴネントムツキ」と年齢《とし》をかゝせた。
[#地から3字上げ](明治四十四年 十二月十日)
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     雪

 暮の廿八日は、午食前《ひるめしまえ》から雨になり、降りながら夜に入った。
 夜の二時頃、枕辺《まくらべ》近く撞《どす》と云った物音《ものおと》に、余は岸破《がば》と刎《は》ね起きた。身繕《みづくろ》
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