いしてやゝしばし寝床《ねどこ》に突立《つった》って居ると、忍び込んだと思った人の容子《ようす》は無くて、戸の外《そと》にサラ/\サラ/\忍びやかな音がする。
「雪だ!」
先刻《さっき》の物音は、樫《かし》の枝を滑り落ちた雪の響《おと》だったのだ。余は含笑《ほほえ》みつゝまた眠った。
六時、起きて雨戸をあけると、白い光《ひかり》がぱっと眼を射《い》た。縁先《えんさき》まで真白だ。最早《もう》五寸から積って居るが、まだ盛《さかん》に降って居る。
去年は暖かで、ついぞ雪らしい雪を見なかった。年の内に五寸からの雪を見ることは、余等が千歳村の民になってからはじめてゞある。
余は奥書院《おくしょいん》の戸をあけた。西南を一目に見晴《みは》らす此処《ここ》の座敷は、今雪の田園《でんえん》を額縁《がくぶち》なしの画《え》にして見せて居る。庭の内に高低《こうてい》参差《しんし》とした十数本の松は、何れも忍《しの》び得る限《かぎ》り雪に撓《た》わんで、最早|払《はら》おうか今払おうかと思い貌《がお》に枝を揺々《ゆらゆら》さして居る。素裸《すっぱだか》になってた落葉木《らくようぼく》は、従順《すなお
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