。菊はまだ褪《うつろ》わずして狂うものは狂いそめ、小菊、紺菊の類は、園の此処彼処にさま/″\な色を見せ、紅白の茶山花《さざんか》は枝上地上に咲きこぼれて居る。ドウダン、ヤマモミジ、一行寺、大盃、イタヤ、ハツシモ、など云う類《たぐい》の楓《かえで》や銀杏《いちょう》は、深く浅く鮮やかにまた渋《しぶ》く、紅、黄、褐《かち》、茜《あかね》、紫さま/″\の色に出で、気の重い常緑木《ときわぎ》や気軽な裸木《はだかぎ》の間を彩《いろ》どる。常緑木の中でも、松や杉は青々とした葉の下に黄ばんだ古葉《ふるは》を簇々《むらむら》と垂《た》れて、自ら新にす可く一吹《いっすい》の風を待って居る。菊、茶山花の香を含んで酒の様に濃い空気を吸いつゝ、余はさながら虻《あぶ》の様に、庭から園、園から畑と徘徊《はいかい》する。庭を歩く時、足下に落葉がかさと鳴る。梅の小枝に妙な物がと目をとめて見ると、蛙《かわず》の干物《ひもの》が突刺してある。此はイタズラ小僧の百舌鳥《もず》めが食料に干《ほ》して置《お》いて其まゝ置き忘れたのである。園を歩く時、大半は種になったコスモスの梢《こずえ》に咲き残った紅白の花が三つ四つ淋《さび》
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