を見れば、茶褐色に焦《こが》れた雑木山の向うに、濃い黛色《たいしょく》の低い山が横長く出没して居る。多摩川《たまがわ》の西岸を縁《ふち》どる所謂多摩の横山で、川は見えぬが流れの筋《すじ》は分明《ぶんみょう》に指さゝれる。少し西北には、青梅《あおめ》から多摩川上流の山々が淡く見える。西南の方は、富士山も大山も曇った空に潜《ひそ》んで見えない。唯|藍色《あいいろ》の雲の間から、弱い弱い日脚《ひあし》が唯一筋|斜《はす》に落ちて居る。
やゝ久しく吾を忘れて眺《なが》め入った余は、今京王電鉄が建てた墓地敷地展望台の上に立って居ることに気がついた。余は更に目をあげてあたりを見廻わした。此望台を中心として、二十万坪六十余町歩の耕地宅地を包囲して、南に東に北に西に規則正しく間隔《かんかく》を置いて高く樹梢に翻って居る十数流の紅白旗は、戦わずして已に勝を宣する占領旗《せんりょうき》かと疑われ、中央に突立ってあたり見下《みお》ろす展望台は、蠢爾《しゅんじ》としてこゝに耕す人と其|住家《すみか》とを呑《の》んでかゝって威嚇《いかく》して居る様で、余は此展望台に立つのが恥かしくなった。
雪空の様に曇りつ
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