ちちゅう》したが、終《つい》に女児《じょじ》と犬を下に残して片手|欄《てすり》を握りつゝ酒樽の薦《こも》を敷いた楷梯《はしご》を上った。北へ、折れて西へ、折れて南へ、三|重《じゅう》の楷梯を上って漸く頂上に達した。中々高い。頂《いただき》は八分板を並べ、丈夫に床《ゆか》をかいてある。
余は思わず嗟嘆《さたん》して見廻《みま》わした。好い見晴らしだ。武蔵野の此辺では、中々斯程の展望所は無い。望台を中心としてほゞ大円形《だいえんけい》をなした畑地は、一寸程になった麦の緑縞《みどりじま》、甘藷《さつま》を掘ったあとの紫がかった黒土、べったり緑青《ろくしょう》をなすった大根畑、明るい緑色の白菜畑《はくさいばたけ》、白っぽい黄色の晩陸稲《おくおかぼ》、入乱れて八方に展開し、其周囲には霜《しも》に染《そ》みた雑木林、人家を包む樫《かし》木立《こだち》、丈高い宮の赤松などが遠くなり近くなりくるり取巻《とりま》いて居る。北を見ると、最早《もう》鉄軌《れえる》を敷いた電鉄の線路が、烏山の木立の間に見え隠れ、此方《こなた》のまだ枕木も敷かぬ部分には工夫が五六人|鶴嘴《つるはし》を振《ふ》り上げて居る。西
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