出た。
 曇った暗《くら》い夜である。
 八幡下の田圃まで往って東を見る。田圃向うの黒い村を鮮《あざ》やかに劃《しき》って、東の空は月の出の様に明るい。何千何万の電燈《でんとう》、瓦斯《がす》、松明《たいまつ》が、彼夜の中の昼を作《な》して居るのであろう。見て居ると、其|夥《おびただ》しい明光《あかり》が、さす息引く息であるかの様に伸《の》びたり縮んだりする。其明りの中から時々|電《いなずま》の様な光《ひかり》がぴかりと騰《あが》る。
「何の光だろう?」
「写真を撮《と》るマグネシウムの光でしょうか」
「否《いや》、弔砲の閃光《ひかり》かも知れん」
 先程から引つゞいて、大きな心臓《しんぞう》の鼓動の如く、正《ただ》しい時を隔《へだ》てゝ弔砲が響《ひび》いて居る。――あゝ鐘が鳴って居る。南のは東覚院《とうがくいん》、宝性寺《ほうしょうじ》、安穏寺《あんのんじ》、北のは――寺、――寺、東にも、西にも、おのがじし然も申合わせた様に、我君|眠《ねむ》りませ、永久《とこしえ》に眠りませ、と哀音長く鳴り連れて居る。二つの響はあたかも余等の胸《むね》の響に通うた、砲声の雄叫《おたけ》び、鐘声の悲泣
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