五十分、母屋《おもや》の六畳を掃《は》いて、清《きよ》い白布をかけた長方形の大きな低い卓子《つくえ》を東向きに直した。上には、秋草の花を活《い》けた小花瓶を右左に置き、正面には橢円形《だえんけい》の小さな鏡を立て、其前に火を入れた青磁《せいじ》の香炉、紫の香包を傍《そば》に置いた。いさゝかランプの心を捻《ねじ》ると、卓子の上の物皆明るく、心も自《おの》ずからあらたまる。家族一同手を膝《ひざ》に、息をのんで控《ひか》えた。
柱時計の短針《たんしん》が八時を指《さ》すか指さぬに、
ドオ………ン!
待ち設《もう》けても今更人の心魂を駭《おどろ》かす大砲の音が、家をも我等の全身をも揺《ゆ》り撼《うご》かして響いた。
今|霊轜《れいじゅ》宮城を出でさせられるのだ。
主人《あるじ》は東に向い一拝して香を焚《た》き、再拝して退《さが》った。妻がつゞいて再拝して香を焚き、三拝して退いた。七歳《ななつ》の鶴子も焼香《しょうこう》した。最後に婢《おんな》も香を焚いて、東を拝した。
余が家の奉送《ほうそう》は終った。
*
余は提灯《ちょうちん》ともして、妻と唯二人門を
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