歌だ。

       九

 八月十六日。
 隣の家鴨《あひる》が二羽迷い込んだ。雌《めす》は捕えて渡したが、雄が床《ゆか》の下深く逃げ込んで、ドウしてもつかまらない。隣の息子《むすこ》が雌を連れて来て、刮々《くゎくくゎく》云わしたら、雄はひとりでに床の下から出て来て、難なく捉《つか》まった。今更の様だが女の力。
 夕方|縁《えん》の籐椅子《とういす》に腰かけて、静に夕景色を味う。苅《かり》あと青い芝生も、庭中の花と云う花も蔭《かげ》に入り、月下香の香が高く一庭に薫《くん》ずる。金の鎌の様な月が、時々雲に入ったり出たり。南方に淡《あわ》い銀河が流れる。星もちらほら出て居る。村々は最早《もう》黒う暮れて、時々|眩《まぶ》しい火光《あかり》がぱっと射す。船橋の方には、先帝《せんてい》の御為に上げるのか、哀々《あいあい》とした念仏の声が長く曳《ひ》いて聞こえる。庭ではスイッチョが鳴く。蟋蟀《きりぎりす》が鳴く。夜と云うに、蝉の一種が鳴く。隣の林にはガチャ/\が鳴く。
 寂《さび》しい涼しい初秋の夜。
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     御大葬の夜

 明治天皇|大葬《たいそう》の夜である。
 七時
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