》に襲《おそ》われたのである。随分死の苦しみをしたであろうに、家の者はぐっすり寝込《ねこ》んで些《ちっと》も知らなかった。昨秋以来鼬の難《なん》にかゝることこゝに五たびだ。前度に懲《こ》りて、鶏舎の締《しま》りを厳重にしたが、外にしめ出しては詮方《しかた》が無い。梨《なし》の木の下に埋葬。
 午後東京から来た学生の一人が、天皇陛下|今暁《こんぎょう》一時四十三分|崩御《ほうぎょ》あらせられたと云う事を告げた。
 陛下崩御――其れは御重態《ごじゅうたい》の報伝わって以来|万更《まんざら》思い掛けぬ事ではなかったが。
 園内《えんない》を歩いて陛下の御一生を思うた。
 東の方を見ると、空も喪装《もそう》をしたのかと思われて、墨色《すみいろ》の雲が東京の空をうち覆《おお》うて居る。暮れ方になって降り出した。

       四

 七月三十一日。
 欝陶《うっとう》しく、物悲しい日。
 新聞は皆|黒縁《くろぶち》だ。不図新聞の一面に「睦仁《むつひと》」の二字を見つけた。下に「先帝御手跡」とある。孝明天皇の御筆かと思うたのは一瞬時《いっしゅんじ》、陛下は已に先帝とならせられたのであった。新帝陛
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