前の好い男振りの好い岩公が音頭とりで、「人里《ひとざと》はなれた三軒屋でも、ソレ、住めば都の風が吹《ふ》ゥくゥ、ドッコイ」歌声《うたごえ》賑《にぎ》やかにばったばた。北の金《かね》さん宅《とこ》は口の重い人達ばかり、家族中で歌の一つも歌おうと云う稲公《いねこう》は砲兵に、春っ子は小学校に往って居るので、爺《おやじ》、長男長女、三男の四人《よったり》、歌は歌わぬかわり長男の音公が時々「ヨウ」と懸声に勢《いきおい》をつけて、規則正しくばったばた。西も東も南も北も勇ましい歓喜の勝鬨《かちどき》。聞くからに心《むね》が躍《おど》る。
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つゆ霽《は》れやたう/\/\と麦《むぎ》を撲《う》つ
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[#地から3字上げ](明治四十三年 六月二十九日)
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有たぬ者
新宿八王子間の電車線路工事が始まって、大勢の土方《どかた》が入り込み、村は連日《れんじつ》戒厳令の下《もと》にでも住む様に兢々《きょうきょう》として居る。
天下無敵の強者と云えば、土方人足は其一であろう。彼等は頂天《ちょうてん》立地《りっち》何の恐るゝ処もない赤裸《あ
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