目の按摩《あんま》を二人|轢《ひ》き倒し、大分の面倒を惹起《ひきおこ》した。其隣の馬は、節句の遊びに乗った親類の村蔵と云う男を刎《は》ね落して、肩骨《かたぼね》を挫《くじ》き、接骨医《せっこつい》に二月も通わねばならぬ様の怪我をさせ、其為一家の予算に狂いが来て、予定の結婚が半歳も延ばされた。
だから馬も考えものだ、と皆が言う。
[#地から3字上げ](明治四十五年 六月十七日)
[#改ページ]
つゆ霽れ
梅雨中とは云いながら、此十日余思わしい日の目も見ず、畳《たたみ》を拭くと新しい雑巾《ぞうきん》が黴《かび》で真黒になった。今日はからりと霽れて、歓《よろこ》ばしい日光の代《よ》になった。待ちかねた様に蝉《せみ》が高音《たかね》をあげる。ほやり/\水蒸気立つ土には樹影《こかげ》黒々と落ち、処女《おとめ》の袖《そで》の様に青々と晴れた空には、夏雲が白く光る。戸、障子、窓の限りを開放《あけはな》して存分に日光と風とを容《い》れる。
今日の晴を待ちつけた農家は、小踊《こおど》りして、麦うちをはじめた。東でもばた/\、西でもばったばた。東の辰さんの家では、形《なり》は小さいが気
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