ひく。他所では馬に引かす犁《すき》を重そうに人間が引張って、牛か馬の様に泥水《どろみず》の中を踏み込み/\ひいて行く。労力《ろうりょく》其ものゝ画姿を見る様で、気の毒すぎて馬鹿※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]しく、腹が立つ。労働は好いが、何故《なぜ》牛馬の働《はたらき》までせねばならぬ乎。
然し千歳村は約千町歩の面積《めんせき》の内、田はやっと六十町歩に過ぎぬ。田の労《ろう》は多くない。馬を使う程でもない、と皆が云う。此れでも昔は馬も居たそうだが、今は馬を飼《か》うも不経済《ふけいざい》で、馬を使うより人力がまだ/\ましと皆が云う。共同して馬を飼うたらと云ったこともあるが共同が中々行われぬ。
馬も一利一害である。余の字《あざ》には、二三年来二十七戸の内で馬を飼う家が三軒出来た。内二軒は男の子が不足なので、東京からの下肥《しもごえ》ひきに馬を飼う事を思い立ったのである。然し石山の馬は、口綱をとって行く主人と調子が合わなかった為、一寸した阪路を下る車に主人は脾腹《ひばら》と太腿《ふともも》をうたせ、二月も寝る程の怪我をした。寺本の馬は、新宿で電車に驚いて、盲
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