とのものをとっても、大目に見られる。ムロの鴛鴦夫婦は、此《この》寛典《かんてん》の中に其理想的|享楽生活《きょうらくせいかつ》を楽しんで居るのである。
 午後到頭雨になった。蛙《かわず》の声が劣《おと》らじと雨に競《きそ》うてわめく。
 夜皆寝て了うたあとで、母屋《おもや》の段落《だんおち》で二葉亭訳「うき草」を読んだ。此処《ここ》は引越した年の秋、無理に北側《きたがわ》につぎ足した長五畳の板張《いたばり》で、一尺程段落になって居る。勾配《こうばい》がつかぬので、屋根は海鼠板《なまこいた》のトタンにし、爪立《つまだ》てば頭が閊《つか》える天井《てんじょう》を張った。先には食堂にして居たので、此狭い船房《カビン》の様な棺の中の様な室《しつ》で、色々の人が余等と食を共にした。今は世に亡《な》き人々の記憶が、少なからず此処《ここ》に籠《こも》って居る。
 夜は更《ふ》けた。余は「うき草」の巻を開《あ》けたまゝ、読むともなく、想うともなく、テェブルに凭《もた》れて居る。雨がぼと/\頭上《ずじょう》のトタンをたゝく。ランプが※[#「虫+慈」、下巻−68−4]々ともえる。
 うき草の訳者二葉亭は印
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