ゅうにそう》に住んで、十三の男児《むすこ》を頭に子供が四人、六畳と二畳を三円五十銭で借り、かみさんは麻《あさ》つなぎの内職をして居る。
「だから中々遊んで居られませんや」
 烏山《からすやま》の口《くち》で下りて、代を払い、南へ切れ込んだ。
 雨は止んで居る。懐中電燈の光を便《たよ》りに、真黒い藪蔭《やぶかげ》の路を通って、田圃《たんぼ》に下りた。夜目にも白い田の水。蛙《かわず》の声が雨の様だ。不図東の空《そら》を見ると、大火事の様に空が焼けて居る。空に映《うつ》る東京の火光《あかり》である。見る/\すうと縮《ちぢ》み、またふっと伸びる。二百万の生霊《せいれい》が吐《つ》く息《いき》ひく息が焔《ほのお》になるのかと物凄《ものすご》い。田圃の行き止まりに小さな流れがある。其処《そこ》に一つ碧《あお》い光が居る。はっと思うと、ついと流れた。螢《ほたる》であった。田圃を上りきると、今度は南の空の根方《ねかた》が赤く焼けて居る。東京程にもないが、此は横浜の火光《あかり》であろう。村々は死んだ様に真黒《まっくろ》に寝て居る。都は魘《おそ》われた様に深夜《しんや》に火の息を吐いて居る。
[#地から
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