黒文字で危険と書き、注意と書いてある。其様《そん》な危険なものなら、百姓の頭の上を引張《ひっぱ》らずと、地下でも通したらよさそうなものだ。
よく身投《みなげ》があるので其|袂《たもと》に供養《くよう》の卒塔婆《そとば》が立って居る玉川上水の橋を渡って、田圃に下り、また坂を上って松友《しょうゆう》の杉林の間を行く。此処の杉林は見ものである。檣《ほばしら》、電柱、五月鯉《さつきのこい》の棹《さお》などになるのが、奇麗に下枝を下《お》ろされ、殆んど本末の太さの差もなく、矗々《すくすく》と天を刺して居る。電燈会社は、此杉林を横断《おうだん》して更に電線を引きたがって居るが、松友の財産家が一万円出すと云う会社の提議《ていぎ》を刎《は》ねつけて応ぜぬので、手古摺《てこず》って居るそうである。
雨がはら/\と来た。ステッキ一本の余は、降ったり止んだりする危《あぶな》げな空を眺め※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]行く。田無街道を突切って、荻窪停車場に来た。
中野まで汽車。中野から電車。お茶の水で下りて、本郷中央会堂に往った。
二
何の為の慈善演芸会か
前へ
次へ
全684ページ中511ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング