》、紫と白と黄の渓※[#「くさかんむり/孫」、第3水準1−91−17]《あやめ》、薔薇《ばら》、石竹《せきちく》、矍麦《とこなつ》、虞美人草《ぐびじんそう》、花芥子《はなげし》、紅白《こうはく》除虫菊《じょちゅうぎく》、皆存分に咲いて、庭も園も色々に明《あか》るくなった。
畑では麦が日に/\照って、周囲《あたり》の黯《くら》い緑に競《きそ》う。春蝉《はるぜみ》が鳴《な》く。剖葦《よしきり》が鳴く。蛙《かわず》が鳴く。青い風が吹く。夕方は月見草《つきみそう》が庭一ぱいに咲いて香《かお》る。
今日《きょう》は雨が欲しく、風が恋《こい》しく、蔭《かげ》がなつかしい五月下旬の日であった。蝉《せみ》の音《ね》、色づいた麦、耳にも眼にもじり/\と暑《あつ》く、光《ひか》る緑に眼は痛《いた》い様であった。果然《かぜん》寒暖計《かんだんけい》は途方《とほう》もない八十度を指《さ》した。
落葉木《らくようぼく》が悉皆《すっかり》若葉から青葉になった処で、樫《かし》、松《まつ》、杉《すぎ》、樅《もみ》、椎《しい》等の常緑樹《ときわぎ》や竹《たけ》の類《るい》が、日に/\古葉《ふるは》を落しては若々し
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