》も消え失せ、既に離籍《りせき》しようかとした程であった。其れがまた以前の如く居付《いつ》く様になり、到頭余が家のデカで死んだ。
今朝|懇意《こんい》の車屋がデカの死骸《しがい》を連れて来た。死骸は冷たくなって、少し眼をあいて居たが、一点の血痕《けっこん》もなく、唯|鼻先《はなさき》に土がついて居た。其死を目撃《もくげき》した人の話に、デカは昨日甲州街道の給田《きゅうでん》に遊びに往って、夕方玉川から帰る自動車目がけて吠《ほ》え付いた。と思うたら、自動車のタイヤに鼻づらを衝《つ》かれたのであろう、ひょろ/\と二度ばかり顛《ころ》んだ。自動車は見かえりもせず東京の方に奔って往って了うた。其容子を見て居た人は、デカを可愛がる人であったので、デカを連れ込んで、水天宮《すいてんぐう》の御符《おふだ》など飲ましたが、駄目であった。
余は鶏柵内《けいさくない》のミズクサの木の根を深く掘って、薦《こも》に包《つつ》んだまゝ眠った様なデカの死骸を葬《ほうむ》った。
[#地から3字上げ](大正二年 二月十七日)
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ハムレット
帝国劇場で文芸協会のハムレットがある。芝居と
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