。余は墓地から追い出されて、また本願寺前の広場に出た。
不図本願寺の門があいて居るのを見つけた。門口には巡査か門番かの小屋《こや》があって、あかりがついて居る。然し誰|咎《とが》むる者も無いので、突々《つつ》と入って、本堂の縁《えん》に上った。大分西に傾いた月の光は地を這《は》うて、本堂の縁は闇《くら》い蔭《かげ》になって居る。やっと安息の場所を獲《え》て、広縁《ひろえん》に風呂敷を敷き、手枕《たまくら》をして横になった。少しウト/\するかと思うと、直ぐ頭の上で何やらばさ/\と云う響がした。余は眼を開《あ》いて頭上《ずじょう》の闇《やみ》を見た。同時に闇の中に「ク※[#二の字点、1−2−22]ク※[#二の字点、1−2−22]」と云う囁《ささ》やきを聞いた。
「あ、鳩《はと》だ」
余はまたウト/\となった。
月は次第に落ちて行く。
[#地から3字上げ](明治四十二年 四月一日)
[#改ページ]
与右衛門さん
村の三月節句で、皆が遊んであるく。家は潰《つぶ》され、法律上の妻には出て往かれ、今は実家の厄介《やっかい》になって居る久《ひさ》さんが、何《なに》発心《ほっしん
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