》してか今日はまる/\の青坊主《あおぼうず》に剃《そ》って、手拭肩に独ぶら/\歩いて居る。
 甲州街道の小間物屋のおかみが荷を背負《せお》って来た。「ドウもねえあなた、天道様《てんとうさま》に可愛がられまして、此通り真黒でございます」と頬《ほお》を撫《な》でる。気の利いた口のきゝぶり、前半生に面白い話を持て居そうな女だ。負ってあるく荷は十貫目からあると云う。細君が鬢櫛《びんぐし》と鶴子の花簪《はなかんざし》を買うた。
 小間物屋のおかみが帰ると、与右衛門《よえもん》さんが地所を買わぬかと云うて来た。少しばかりの地面を買って古い家を建てたりしたので、やれ地面を買わぬかの、古い天水桶用《てんすいおけよう》の釜《かま》を買わぬかの、植木の売物があるのと、蟻《あり》の砂糖《さとう》につく如くたかってくる。金が無いと云っても、中々|本当《ほんと》にしてくれぬ。与右衛門さんも其一人である。
 与右衛門さんは、村内《そんない》切《き》っての吾儘者《わがままもの》剛慾者《ごうよくもの》としてのけものにさるゝ男である。村内でも工面《くめん》のよい方で、齢《とし》もまだ五十|左右《さう》、がっしりした岩畳
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