ると、墓地で蛇を見た。田圃の小川の※[#「木+威」、第4水準2−15−16]《いび》の下では、子供が鮒《ふな》を釣《つ》って居る。十丁そこら往って見かえると、吾家も香爐《こうろ》の家《いえ》程に小さく霞《かす》んで居る。
 今日は夕日の富士が、画にかいた「理想《りそう》」の様に遠くて美しかった。

       (七)仲春

 四月十七日。
 戸を開《あ》けて、海――かと思うた。家を繞《めぐ》って鉛色《なまりいろ》の朝霞《あさがすみ》。村々の森の梢《こずえ》が、幽霊《ゆうれい》の様に空《そら》に浮いて居る。雨かと舌鼓《したつづみ》をうったら、霞《かすみ》の中からぼんやりと日輪《にちりん》が出て来た。見る/\日の威力は加わって、光は白く霞に咽《むせ》ぶ。
 庭の桜の真盛りである。落葉松《らくようしょう》、海棠《かいどう》は十五六の少年と十四五の少女を見る様。紫の箱根つゝじ、雪柳《ゆきやなぎ》、紅白の椿、皆真盛り。一重山吹も咲き出した。セイゲン、ヤシオなど云う血紅色《けっこうしょく》、紅褐色《こうかっしょく》の春モミジはもとより、槭《もみじ》、楓《かえで》、楢《なら》、欅《けやき》、ソロな
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