ゅう》に大きな物の唸《うな》り声が響く。縁から見上げると、夏に見る様な白銅色の巻雲《けんうん》を背《うしろ》にして、南の空《そら》に赤い大紙鳶《おおだこ》が一つ※[#「風+昜」、第3水準1−94−7]《あが》って居る。ブラ下げた長い長い二本の縄《なわ》の脚《あし》を軟《やわ》らかに空中に波うたして、紙鳶《たこ》は心《こころ》長閑《のどか》に虚空《こくう》の海に立泳《たちおよ》ぎをして居る。ブーンと云うウナリが、武蔵野一ぱいに響き渡る。
 春だ。
 晩食に摘草の馳走。野蒜の酢味噌《すみそ》は可《か》、ひたし物の嫁菜は苦《にが》かった。

       (五)彼岸入り

 三月十八日。彼岸の入り。
 風はまだ冷《つめ》たいが、雲雀の歌にも心なしか力《ちから》がついて、富士も鉛色《なまりいろ》に淡《あわ》く霞《かす》む。
 庭には沈丁花《ちんちょうげ》の甘《あま》い香《か》が日も夜も溢《あふ》れる。梅は赤い萼《がく》になって、晩咲《おそざき》紅梅《こうばい》の蕾がふくれた。犬が母子《おやこ》で芝生《しばふ》にトチ狂《くる》う。猫が小犬の様に駈《か》け廻《まわ》る。
 春だ。
 彼岸入りで、団
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