ものですから、エヘン、エヘン――ウーイ、ウーイ、ウーイ)……御親切な福富さんの(ウーイ、ウーイ)ます/\御繁昌《ごはんじょう》で(ウーイ、ウーイ)表《おもて》の方から千両箱、右の方から宝船《たからぶね》(ウーイ、ウーイ)……
 障子の外に立聞く主人は、冷汗が流れた。彼は窃《そっ》とぬき足して母屋に帰った。唄《うた》はまだつゞいて、(ウーイ、ウーイ)が Refrain の様に響いて来る。
[#地から3字上げ](明治四十五年 二月六日)
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     春七日

       (一)雛節句

 三月三日。別に買った雛も無いから、細君が鶴子を相手に紙雛を折ったり、色紙《いろがみ》の鶴、香箱《こうばこ》、三方《さんぼう》、四方《しほう》を折ったり、あらん限りの可愛いものを集めて、雛壇《ひなだん》を飾《かざ》った。
 草餅《くさもち》が出来た。蓬《よもぎ》は昨日鶴子が夏やと田圃《たんぼ》に往って摘《つ》んだのである。東京の草餅は、染料《せんりょう》を使うから、色は美しいが、肝腎《かんじん》の香が薄《うす》い。
 今朝は非常の霜だった。午《ひる》の前後はまた無闇《むやみ》と暖《あたたか
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