なが》めて楽《たのし》む主人《あるじ》も、不幸な者とは云われない。
勝手の方で、飯《めし》をやる合図《あいず》の口笛《くちぶえ》が鳴ったので、犬の家族は刎《は》ね起きて先を争うて走って往った。主人はやおら下駄《げた》をぬいで、芝生の真中《まんなか》に大の字に仰臥《ぎょうが》した。而して一鳥|過《よ》ぎらず片雲《へんうん》駐《とど》まらぬ浅碧《あさみどり》の空《そら》を、何時までも何時までも眺めた。
[#地から3字上げ](明治四十五年 一月十日)
[#改ページ]
小鳥
芝生を焼く。
水島生《みずしませい》が来た。社会主義《しゃかいしゅぎ》神髄《しんずい》を返えし、大英遊記《だいえいゆうき》を借りて往った。林の中で拾《ひろ》ったと云って、弾痕《だんこん》ある鶇《つぐみ》を一|羽《わ》持て来た。食う気になれぬので、楓の下に埋葬《まいそう》。
銃猟《じゅうりょう》は面白いものであろう。小鳥はうまいものである。此村にはあまり銃猟に来る都人士もないので、小鳥は可なり多い。ある日庭を歩いて居ると、突然東の方から嵐《あらし》の様な羽音《はおと》を立てゝ、夥《おびただ》しい小鳥の群
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