三ばい頭から水を浴びる。不精者《ぶしょうもの》の癖《くせ》で、毎日の冷水浴をせぬかわり、一年分を元朝《がんちょう》に済《す》まそうと謂うのである。
戸、窓《まど》の限りを明《あ》け、それから鶏小屋《とりごや》の開闢《かいびゃく》。
畑《はたけ》に出て紅《あか》い実付《みつき》の野茨《のばら》一枝《ひとえだ》を剪《き》って廊下の釣花瓶《つりはないけ》に活《い》け、蕾付《つぼみつき》の白菜《はくさい》一株《ひとかぶ》を採《と》って、旅順《りょじゅん》の記念にもらった砲弾《ほうだん》信管《しんかん》のカラを内筒《ないとう》にした竹の花立《はなたて》に插《さ》し、食堂の六畳に飾《かざ》る。旧臘《きゅうろう》珍らしく暖《あたたか》だったので、霜よけもせぬ白菜に蕾がついたのである。
十時過ぎ、右の食堂で家族打寄り、梅干茶《うめぼしちゃ》一|碗《わん》、枯露柿《ころがき》一|個《こ》。今日《きょう》此家《ここ》で正月を迎えた者は、主人夫妻、養女、旧臘から逗留中《とうりゅうちゅう》の秋田の小娘《こむすめ》、毎日仕事に来る片眼のかみさん。猫のトラ、犬のデカ、ピン、小犬のチョン、クマ、鶏が十五羽。
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