しょうと云うた。とめやのきぬやは早速立ン坊を連れて良人《おっと》に引合わせ、翌日から車を挽《ひ》かせて行商《こうしょう》に出したが、立ン坊君正直に働いて双方喜んで居る云々。此話は非常に旧主人夫婦を悦ばした。あの温順《おとな》しい女にも、中々|濶達《かったつ》な所がある、所謂近江商人の血が流れて居る、とあとで彼等は語り合った。
彼女は其時已に六月《むつき》の身重《みおも》であった。今年の春男子を挙げたと云うたよりがあった。今日の其《その》訃《ふ》は実に突然である。
彼女の臨終は如何であったろうか。当歳の子と夫を残して逝《ゆ》く彼女は嘸《さぞ》残念であったであろう。然し彼女自身は朝《あした》に生《うま》れて夕《ゆうべ》に死すとも憾《うら》みは無い善良の生涯を送って居たので、生の目的は果した。彼女の実家は仏教の篤信者《とくしんじゃ》で、彼女の伯母《おば》なぞは南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》を唱《とな》えつゝ安らかな大往生《だいおうじょう》を遂《と》げた。彼女にも其血が流れて居る。
謙遜な奉仕の天使、彼等が我等と共に在るの日、高慢な我等は微笑を以て其|弱点《じゃくてん》を見つゝ十分に尊敬
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