から上京したばかりだと云った。四日程|逗留《とうりゅう》して、台所《だいどこ》をしたり、裁縫《しごと》を手伝《てつだ》ったり、折から不元気で居た妻を一方ならず助けて往った。其翌年の春、彼女は同郷《どうきょう》の者で姓も同じく商売も兄のと似寄《によ》った男に縁づいたことを知らして来た。秋十月の末、ある日|丸髷《まるまげ》に結《ゆ》った血色《けっしょく》の好い若いおかみさんが尋ねて来た。とめやであった。名も絹《きぬ》とあらためて、立派なおかみさんになって居た。夫妻|共稼《ともかせ》ぎで中々|忙《せわ》しいと云った。其れから東京では正直な人を得難いことをかこって、誰か好い子僧《こぞう》はあるまいかなぞ折から居合わした懇意の大工に聞いて居た。彼女の話の中に一つ面白い事があった。ある時|両国橋《りょうごくばし》の上で彼女は四十あまりの如何にも汚ない風をした立《たち》ン坊《ぼう》に会うた。つく/″\其顔を見て居た彼女は、立ン坊に向い、好い仕事があるかと聞いた。立ン坊は無いと答えた。橋の上に立って居るよりわたしの家に来て商売の手伝《てつだい》をしないかと云うた。立ン坊も彼女の顔を見て居たが、手伝しま
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