。それから新五郎さんは重い口を開いて、
「実は――隣《となり》の勘五郎さんでございますが、其の――勘五郎さん処《とこ》の次郎さんが亡くなられまして――」
「エッ、次郎さんが? 次郎さんが死んだんですか」
 青山《あおやま》学院《がくいん》で最早《もう》試験前の忙《せわ》しくして居るであろうと思った次郎少年が死んだとは、嘘《うそ》の様な話だ。
 新五郎さんは、持て来た医師の診断書を見せた。急性肺炎とある。急報に接して飛んで往った次郎さんの阿爺《おとっさん》も、間《ま》に合わなかったそうである。夜にかけて釣台《つりだい》にのせて連れて来て、組合中《くみあいじゅう》の都合《つごう》で今日《きょう》葬式《そうしき》をすると云うのである。
 新五郎さんは直ぐ帰り、夫婦も直ぐあとから出かけた。
 次郎さんは、千歳村《ちとせむら》で唯五軒の耶蘇信者の其一軒に生れて、名の如く次男であった。粕谷《かすや》の夫妻が千歳村に移住《いじゅう》した其春、好成績《こうせいせき》で小学校を卒業し、阿爺は師範《しはん》学校《がっこう》にでも入れようかと云って居たのを、勧《すす》めて青山学院に入れた。学資不足なので、彼
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