は牛乳を配達《はいだつ》したり、学校食堂の給仕をしたりして勉強して居た。斯《こ》うして約一年過ぎ、最初の学年試験も今日|明日《あす》と云う際《きわ》になって、突然病死したのである。彼は父の愛子であった。
連日《れんじつ》の雪や雨にさながら沼《ぬま》になった悪路に足駄《あしだ》を踏み込み/\、彼等夫妻は鉛《なまり》の様に重い心で次郎さんの家に往った。
禾場《うちば》には村の人達が寄って、板を削《けず》り寝棺《ねがん》を拵《こさ》えて居る。以前《もと》は耶蘇教信者と嫌われて、次郎さんのお祖父《じい》さんの葬式の時なぞは誰も来て手伝《てつど》うてくれる者もなかったそうだ。土間には大勢《おおぜい》女の人達が立ち働いて煮焚《にた》きをして居る。彼等夫妻は上《あが》って勘五郎さんに苦しい挨拶した。恵比須《えびす》さまの様な顔をしたかみさんも出て来た。勧めて無理な勉強をさして、此様《こん》な事になってしまって、まことに済《す》みません、と詫《わ》ぶる外に彼等は慰《なぐさ》めの言を知らなかった。
奥座敷《おくざしき》に入ると、次郎さんは蒲団《ふとん》の上に寝て居る。昨日雨中を舁《か》いて来たまゝ
前へ
次へ
全684ページ中421ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング