川音を聴いて居ると、陶然《とうぜん》として即身成仏《そくしんじょうぶつ》の妙境《みょうきょう》に入《い》って了う。
 夜|上利別《かみとしべつ》のマッチ製軸所《せいじくしょ》支配人|久禰田《くねだ》孫兵衛《まごべえ》君に面会。もと小学教師をした淡路《あわじ》の人、真面目な若者である。二里の余もある上利別から始終《しじゅう》関翁の話を聞きに来るそうだ。
 九月三十日。晴。雪のような朝霜。
 最早斗満を去らねばならぬ日となった。
 早朝関翁以下|駅逓《えきてい》の人々に別を告げる。斗満橋を渡って、見かえると、谷を罩《こ》むる碧《あお》い朝霧《あさぎり》の中に、関翁は此方に向い、杖《つえ》の頭《かしら》に両手を組《く》んで其上に額《ひたい》を押付《おしつ》けて居られた。
 ※[#「陸」の「こざと」に代えて「冫」、上巻−311−12]別で余作君に別れ、足寄駅《あしょろえき》で五郎君の勤務した郵便局を教えられ、高島駅《たかしまえき》で又一君に別れ、池田駅で旭川行《あさひかわゆき》の汽車に乗換え、帯広《おびひろ》で貢君に別れ、余等は来た時の同行三人となって了った。汽車は西へ西へと走って、日の夕暮《
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