たので、去年も五十円から出したそうだ。檀家《だんか》一軒のお寺もゆかしいものである。
樺林《かばばやし》を拓《ひら》いて、また一軒、熊笹と玉蜀黍《とうもろこし》の稈《から》で葺《ふ》いた小舎《こや》がある。あたりには樺《かば》を伐《き》ったり焼いたりして、黍《きび》など作ってある。関翁が大声で、「婆サン如何《どう》したかい、何故《なぜ》薬取りに来ない?」と怒鳴《どな》る。爺《じい》さんが出て来て挨拶する。婆さんは留守だった。十一二の男児《むすこ》が出て来る。翁は其肩をたゝき顔を覗《のぞ》き込むようにして「如何《どう》だ、関《せき》の爺《じい》を識《し》ってるか。ウム、識ってるか」子供がにこ/\笑う。路は樺林をぬけて原に出る。霜枯れた草原に、野生《やせい》松葉独活《アスパラガス》の実《み》が紅玉を鏤《ちりば》めて居る。不図白木の鳥居《とりい》が眼についた。見れば、子供が抱《かか》えて行って了《しま》いそうな小さな荒削《あらけず》りの祠《ほこら》が枯草の中に立って居る。誰が何時《いつ》来て建てたのか。誰が何時来て拝《おが》むのか。西行《さいぎょう》ならばたしかに歌よむであろ。歌も句もなく
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