原を過ぎて、崖《がけ》の下、小さな流《ながれ》に沿《そ》うてまた一つ小屋がある。これが斗満|最奥《さいおく》の人家《じんか》で、駅逓《えきてい》から此処《ここ》まで二里。最後の人家を過ぎてしばらく行く程に、イタヤの老樹《ろうじゅ》が一株、大分|紅葉《もみじ》した枝を、振《ふり》面白くさし伸《の》べて居る小高い丘《おか》に来た。少し早いが此処で昼食《ちゅうじき》とする。人夫が蕗《ふき》の葉や蓬《よもぎ》、熊笹《くまざさ》引かゞってイタヤの蔭《かげ》に敷いてくれたので、関翁、余等夫妻、鶴子も新之助君の背《せなか》から下りて、一同草の上に足投げ出し、梅干《うめぼし》菜《さい》で握飯《にぎりめし》を食う。流れは見えぬが、斗満《とまむ》の川音《かわおと》は耳|爽《さわやか》に、川向うに当る牧場内《ぼくじょうない》の雑木山は、午《ご》の日をうけて、黄に紅に緑に燃《も》えて居る。やがてこゝを立って小さな渓流《けいりゅう》を渡る時、一同石に跪《ひざまず》いて清水《しみず》をむすぶ。
最早《もう》人気《ひとけ》は全く絶えて、近くなる時斗満の川音を聞くばかり。鷹《たか》の羽《は》なぞ落ちて居る。径《みち
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