《そこ》にある。創業から創業に移る理想家の翁にとって、汽車が開通した※[#「陸」の「こざと」に代えて「冫」、上巻−301−16]別なんぞは最早《もう》久恋《きゅうれん》の地では無い。其身斗満の下流に住みながら、翁の雄心《ゆうしん》はとくの昔キトウスの山を西に越えて、開闢《かいびゃく》以来人間を知らぬ原始的大寂寞境の征服に駛《は》せて居る。共に眺めんキトウスの月、翁は久しくキトウスの月を共に眺むる人を求めて居る。若い者さえ見ると、胸中《きょうちゅう》の秘《ひ》をほのめかす。此日放牧場の西端に立って遙に斗満《とまむ》上流の山谷《さんこく》を望んだ時、余は翁が心絃《しんげん》の震《ふる》えを切《せつ》ないほど吾|心《むね》に感じた。
鉄線《はりがね》を潜《くぐ》って放牧場を出て、谷に下りた。関牧場はこれから北へ寄るので、此れからニオトマムまでは牧場外を通るのである。善良な顔をした四十余の男と、十四五の男児《むすこ》と各|裸馬《はだかうま》に乗って来た。関翁が声をかける。路作りかた/″\※[#「陸」の「こざと」に代えて「冫」、上巻−302−7]別《りくんべつ》まで買物に行くと云う。三年前入込
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