《たけのこ》のよう、他は菅笠《すげがさ》のような容《なり》をして濃碧の色くっきりと秋空に聳えて居る。やゝ行って、倒れた楢の大木に腰うちかけ、一休《ひとやすみ》してまた行く。高原漸く蹙《せま》って、北の片岨《かたそば》には雑木にまじって山桜《やまざくら》の紅葉したのが見える。桜花《さくら》見にはいつも此処へ来る、と関翁語る。
やがて放牧場の西端に来た。直ぐ眼下《めした》に白樺《しらかば》の簇立《ぞくりつ》する谷がある。小さな人家一つ二つ。煙が立って居る。それからずっと西の方は、斗満上流の奥深く針葉樹《しんようじゅ》を語る印度藍色《インジゴーいろ》の山又山重なり重なって、秋の朝日に菫色《すみれいろ》の微笑《えみ》を浮べて居る。余等はやゝ久しく恍惚《こうこつ》として眺め入った。あゝ彼の奥にこそ玉の如き斗満の水源はあるのだ。「うき事に久しく耐ふる人あらば、共に眺めんキトウスの月」と関翁の歌うた其キトウスの山は、彼《あの》奥にあるのだ。而《しか》して関翁の夢魂《むこん》常に遊ぶキトウス山の西、石狩岳十勝岳の東、北海道の真中に当る方数十里の大無人境は、其奥の奥にあるのだ。翁の迦南《カナン》は其処
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