駅逓に帰って、道庁技師林常夫君に面会。駒場《こまば》出《で》の壮年の林学士。目下ニオトマムに天幕《てんまく》を張って居る。明日関翁と天幕訪問の約束をする。
 昨夕来泊した若年《じゃくねん》の測量技手星正一君にも面会。星君が連れた若い人夫が、食饌のあと片付、掃除、何くれとまめ/\しく立働くを、翁は喜ばしげに見やって、声をかけ、感心だと賞《ほ》める。
 午後は親子三人、此度は街道を西南に坂を半上って、牧場の埒内《らちない》に入る。東向きの山腹、三囲《みかかえ》四囲《よかかえ》もある楢《なら》の大木が、幾株も黄葉の枝を張って、其根もとに清水が湧《わ》いたりして居る。馬牛の群の中を牛糞を避《よ》け、馬糞を跨《また》ぎ、牛馬舎の前を通って、斗満川に出た。少し川辺に立って居ると、小虫が黒糠《くろぬか》の様にたかる。関翁が牧場記事の一節も頷《うなず》かれる。左程大くはないと云っても長《たけ》六尺はある蕗《ふき》や、三尺も伸びた蓬《よもぎ》、自然生の松葉独活《アスパラガス》、馬の尾について殖《ふ》えると云う山牛蒡、反魂香と云う七つ葉なぞが茂って居る川沿いの径《こみち》を通って、斗満橋の袂《たもと》
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