に出た。一坪程の小さな草舎《くさや》がある。屋後《うしろ》には熊の髑髏《あたま》の白くなったのや、まだ比較的|生《なま》しいのを突き刺《さ》した棹《さお》、熊送りに用うるアイヌの幣束イナホなどが十数本、立ったり倒れたりして居る。此は関家で熊狩《くまがり》に雇《やと》って置くアイヌのイコサックルが小屋で、主は久しく留守なのである。覗《のぞい》て見ると、小屋の中は薄暗く、着物の様なものが片隅に置いてある。昔は置きっぱなしで盗まるゝと云う様な事はなかったが、近来人が入り込むので、何時かも大切の鉄砲を盗まれたそうだ。(イコサックルは何を悲観したのか、大正元年の夏多くの熊を射た其鉄砲で自殺した。)
駅逓にはいる時、大勢の足音がする。見れば、巨鋸《おおのこ》や嚢を背負い薬鑵を提《さ》げた男女が、幾組も/\西へ通る。三井の伐木隊《ばつぼくたい》である。富源の開発も結構だが、楢《なら》の木《き》はオークの代用に輸出され、エゾ松トヾ松は紙にされ、胡桃《くるみ》は銃床に、ドロはマッチの軸木《じくぎ》になり、樹木の豊富を誇る北海道の山も今に裸になりはせぬかと、余は一種|猜忌《さいき》の眼を以て彼等を見送っ
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