名も余には遠いものであった。処があとで関翁の話を聞けば、思いきや五郎君は翁の末子で、翁が武蔵野の茅舎《ぼうしゃ》を訪われたのも、実は五郎君の勧《すすめ》であった。要するに余等は五郎君の霊に引張られて今此処に来て翁と対座して居るのである。
 翁は一冊の稿本を取り出して来て示される。題して関牧場創業記事と云う。披《ひら》いて見ると色々面白い事がある。牧場も創業以来已に十年、汽車も開通して、万事がこゝに第二期に入らんとして居る。既往を思えば翁も一夢の感があろう。翁はまた此様なものを作ったと云って見せる。場内の農家に頒《わか》つ刷物《すりもの》である。
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    日々の心得の事
一 一家|和合《なかよく》して先祖を祭り老人《としより》を敬うべし
一 朝は早く起き家業に就き夜は早く寝《ね》につくべし
一 諸上納《しょじょうのう》は早く納むべし
一 金銭取引の勘定《かんじょう》は時々致すべし
一 他人と寄合《よりあい》の時或は時間《とき》の定ある時は必ず守るべし
一 何事にても約束ある上は必ず実行すべし
一 偽言《うそ》は一切いうべからず
一 火の要心を怠るべからず
一 掃除
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