ごんか》に、粕谷の彼は、彼の園内の梅の下に立ち白い花を折って黒髪に插《さ》すお馨さんの姿をまざまざと眼の前に見た。本当に彼女は人になった梅の花であった。だから其花を折って簪《かんざし》にしたのだ。彼女にして初めて梅の花を簪にすることが出来る。彼は重ねて思うた。米国からF女史が帰化《きか》して、日本に伝道に来る。日本からお馨さんが米国に往って米国の人達に敬愛されて死ぬる。斯うして日米の間は自然に繋《つな》がれる。お馨さんは常に日米感情の齟齬《そご》を憂えて居る女であった。日米の親和を熱心に祈って居た女であった。其祈は聴かれて、彼女は米国に死んだ。米国の灰《はい》になり米国の土になった彼女は、真《しん》に日本が米国に遣《つか》わした無位無官の本当の平和の使者《つかい》の一人であったと。蓋《けだし》「宝《たから》の在る所心もまた在る」道理で、お馨さんを愛する程の人は、お馨さんの死んだ米国を懐《おも》わずには居られないのである。
最後に外川先生が師弟の関係を述べ、「彼女は強い女であったが、体《からだ》は強健だし、貧乏はしないし、思いやりと云うものが或は欠《か》ける恐れがあった。だから自分は米
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