ンド》の大学で神学を修めて居た。欧米大陸の波瀾万丈|沸《に》えかえる様な思潮に心魂を震蕩《しんとう》された葛城は、非常の動揺と而して苦悶《くもん》を感じ、大服従のあと大自由に向ってあこがれた。彼が故国の情人に寄する手紙は、其心中の千波万波を漲《みなぎ》らして、一回は一回より激烈なるものとなった。彼はイブセンを読む可く彼女に書き送った。彼女を頭が固《かた》いと罵ったりした。而して彼女をも同じ波瀾に捲き込むべく努めた。斯等の手紙が初心《うぶ》な彼女を震駭《しんがい》憂悶《ゆうもん》せしめた状《さま》は、傍眼《わきめ》にも気の毒であった。彼女は従順にイブセンを読んだ。ツルゲーネフも読んだ。然し彼女は葛城が堕落に向いつゝあるものと考えた。何ともして葛城を救わねばならぬと身を藻掻《もが》いた。彼女は立っても居ても居られなくなった。而して自身亜米利加に渡って葛城を救わねばならぬと覚期《かくご》した。
 粕谷《かすや》の夫妻は彼女を慰めて、葛城が此等の動揺は当《まさ》に来る可き醗酵《はっこう》で、少しも懸念す可きでないと諭《さと》した。然しお馨《けい》さんの渡米には、二念なく賛同した。彼葛城の為にも
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