に無暗《むやみ》に樹木を植え込んだ園内を歩いて、若木《わかき》の梅の下に立った。成程咲いた、咲いた。青軸《あおじく》また緑萼《りょくがく》と呼ばるゝ種類の梅で、花はまだ三四輪、染めた様に緑な萼《がく》から白く膨《ふく》らみ出た蕾《つぼみ》の幾箇を添えて、春まだ浅い此の二月の寒を物ともせず、ぱっちりと咲いて居る。極《きょく》の雪の様にいさゝか青味を帯びた純白の葩《はなびら》、芳烈《ほうれつ》な其香。今更の様だが、梅は凜々《りり》しい気もちの好い花だ。
 白っぽい竪縞《たてじま》の銘仙の羽織、紫紺《しこん》のカシミヤの袴、足駄を穿《は》いた娘が曾て此梅の下に立って、一輪の花を摘んで黒い庇髪《ひさし》の鬢《びん》に插した。お馨さん――其娘の名――は其年の夏亜米利加に渡って、翌年まだ此梅が咲かぬ内に米国で亡くなった。
 其れ以来、彼等は此梅を「お馨さんの梅」と呼ぶのである。

       二

 米国の画家ヂャルヂ、ヘンリー、バウトン[#「ヂャルヂ、ヘンリー、バウトン」に傍線]の描《か》いた「メェフラワァの帰り」と云う画がある。メェフラワァは、約三百年前、信仰、生活の自由を享《う》けん為に、
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