る。犠牲なしでは生きては行かれぬ。犠牲には、毎《つね》に良いものがなる。耶蘇は「吾は天より降《くだ》れる活けるパンなり。吾肉は真の喰物、吾血は真の飲物」と云うたが、実際良いものゝ肉を喰い血を飲んで我等は育つのである。粕谷の墓守、睡眠山無為寺の住持も、想い来れば半生に数限りなき人を殺し、今も殺しつゝある。人を殺して、猶飽かず、其の死体まで掘り出して喰う彼は、畜生道に堕《だ》したのではあるまいか。墓守実は死人喰いの「ゴウル」なのではあるまいか。彼は曾て斯んな夢を見た。誰やら憤って切腹した。彼ではなかった様だ。無論去年の春の事だから、乃木さんでは無い。誰やら切腹すると、瞋恚《しんい》の焔とでも云うのか、剖《さ》いた腹から一団のとろ/\した紅《あか》い火の球が墨黒の空に長い/\尾を曳いて飛んで、ある所に往って鶏の嘴《くちばし》をした異形《いぎょう》の人間に化《な》った。而して彼は其処に催うされて居る宴会の席に加わった。夢見る彼は、眼を挙げてずうと其席を見渡した。手足《てあし》胴体《どうたい》は人間だが、顔は一個として人間の顔は無い。狼の頭、豹の頭、鯊《さめ》の頭、蟒蛇《うわばみ》の頭、蜥蜴《と
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