、突《つ》と墓地に入った。其は提灯の火であった。黒い影が二つ立って居る。近づいて、村の甲乙であることを知った。側に墓穴が掘ってある。「誰か亡くなられたのですか」と墓守が問うた。「えゝ、小さいのが」と一人が答えた。彼等は夜陰《やいん》に墓を掘り終え、小さな棺が来るのを待って居たのである。

       六

 古家を買って建てた墓守が二つの書院は、宮の様だ、寺の様だ、と人が云う。外から眺めると、成程某院とか、某庵とか云いそうな風をして居る。墓地が近いので、ます/\寺らしい。演習《えんしゅう》に来た兵士の一人が、青山街道から望み見て、「あゝお寺が出来たな」と云った。居は気を移すで、寺の様な家に住めば、粕谷の墓守時には有髪《うはつ》の僧の気もちがせぬでも無い。
 然し此れが寺だとすれば、住持《じゅうじ》は恐ろしく悟の開けぬ、煩悩満腹、貪瞋痴《どんじんち》の三悪を立派に具足した腥坊主《なまぐさぼうず》である。彼は好んで人を喰《く》う。生きた人を喰う上に、亜剌比亜夜話にある「ゴウル」の様に墓を掘って死人《しびと》を喰う。彼は死人を喰うが大好きである。
 無論生命は共通である。生存は喰い合いであ
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