泡《しらあわ》を吐いて、一時は如何《どう》なる事かと危ぶんだ。此様な記憶があるので、デカは蛇を恐るゝのであろう。多くの猫は蛇を捕る。彼が家のトラはよく寝鳥《ねとり》を捕《と》ってはむしゃ/\喰うが、蛇をまだ一度もとらぬ。ある時、トラが何ものかと相対《あいたい》し貌《がお》に、芝生に座《すわ》って居るので、覗《のぞ》いて見たら、トグロを巻いた地もぐりが頭をちゞめて寄らば撃《う》たんと眼を怒らして居る。トラが居ずまいを直すたびに、蛇は其頭をトラの方へ向け直す。トラは相関せざるものゝ様に、キチンと前足を揃《そろ》えて、何か他の事を案じ顔である。彼が打殺す可く竿《さお》をとりに往った間に、トラも蛇も物別《ものわか》れになって何処かへ往ってしもうた。

       四

 斯く蛇に近くなっても、まだ嫌悪の情は除《と》れぬ。百花の園にも、一疋の蛇が居れば、最早《もう》園其ものが嫌になる。ある時、書斎の縁の柱の下に、一疋の蛇がにょろ/\頭を擡《もた》げて、上ろうか、と思う様子をして居た。遽《あわ》てゝ蛇打捧を取りに往った間に、蛇が見えなくなった。びく/\もので、戸袋の中や、室内のデスクの下、ソファ
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