居た妻がきゃっと叫《さけ》んだ。南の戸袋に蛇が居たのである。雀が巣くう頃で、雀の臭《におい》を追うて戸袋へ来て居たのであろう。其翌晩、妻が雨戸をしめに行くと、今度は北の戸袋に居た。妻がまたけたゝましく呼んだ。往って繰り残しの雨戸で窃《そっ》と当って見ると、確に軟《やわ》らかなものゝ手答《てごたえ》がする。釣糸に響く魚の手答は好いが、蛇の手応《てごた》えは下《くだ》さらぬ。雨戸をしめれば蛇の逃所がなし、しめねばならず、ランプを呼ぶやら、青竹を吟味《ぎんみ》するやら、小半時《こはんとき》かゝって雨戸をしめ、隅に小さくなって居るのを手早くたゝき殺した。其れが雌《めす》でゞもあったか、翌日他の一疋がのろ/\と其《その》侶《とも》を探がしに来た。一つ撲《う》って、ふりかえる処をつゞけざまに五六つたゝいて打殺した。殺してしもうて、つまらぬ殺生をしたと思うた。
 彼が家のはなれの物置兼客間の天井《てんじょう》には、ぬけ殻《がら》から測《はか》って六尺以上の青大将が居る。其家が隣村にあった頃からの蛇で、家を引移《ひきうつ》すと何時の間にか大将も引越して、吾家貌《わがいえがお》に住んで居る。所謂ヌシだ。
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