殺しもすれば見※[#「しんにょう+官」、第3水準1−92−56]《みのが》しもする。殺しても尽きはせぬが、打ちゃって置くと殖《ふ》えて仕様がないのである。書院の前に大きな百日紅《さるすべり》がある。もと墓地にあったもので、百年以上の老木だ。村の人々が五円で植木屋に売ったのを、すでに家の下まで引出した時、彼が無理に譲ってもらったのである。中は悉皆《すっかり》空洞《うろ》になって、枝の或ものは連理《れんり》になって居る。其れを植えた時、墓地の東隣に住んで居た唖の子が、其幹を指して、何かにょろ/\と上って行く状《さま》をして見せたが、墓地にあった時から此百日紅は蛇の棲家《すみか》であったのだ。彼の家に移って後も、梅雨《つゆ》前《まえ》になると蛇が来て空洞《うろ》の孔《あな》から頭を出したり、幹《みき》に絡《から》んだり、枝の上にトグロをまいて日なたぼこりしたりする。三疋も四疋も出て居ることがある。百日紅の枝其ものが滑《すべ》っこく蛇の膚《はだ》に似通うて居るので、蛇も居心地がよいのであろう。其下を通ると、あまり好い気もちはせぬ。時々は百日紅から家の中へ来ることもある。ある時書院の雨戸をしめて
前へ
次へ
全684ページ中285ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング