ま》の上には青空がある。俺の頭は、日々《にちにち》夜々《やや》に此青空の方へ伸びて行く。俺の足の下には大地《だいち》がある。俺の爪先は、日々夜々に地心へと向うて入って行く。俺の周囲《ぐるり》には空気と空間とがある。俺は此周囲に向うて日々夜々に広がって行く。俺の仕事は此だ。此が俺の仕事だ。成長が仕事なのだ。俺の葉蔭で夏の日に水車小屋の人達が涼《すず》んだり昼寝をしたり、俺の根が君を動かす水の流れの岸をば崩れぬ様に固めたり、俺のドングリを小供が嬉々と拾うたり、其様な事は偶然の機縁で、仕事と云う俺の仕事ではない。俺は今一人だが、俺の友達も其処《そこ》此処《ここ》に居る。其一人は数年前に伐《き》られて、今は荷車《にぐるま》になって甲州街道を東京の下肥のせて歩いて居る。他の友達は、下駄《げた》の歯《は》になって、泥濘《どろ》の路石ころ路を歩いて居る。他の一人は鉋《かんな》の台になって、大工の手脂《てあぶら》に光って居る。他の友達は薪《まき》になって、とうに灰になった。ドブ板になったのもある。また木目が馬鹿に奇麗だと云って、茶室《ちゃしつ》の床柱《とこばしら》なンかになったのもある。根こぎにされて
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