では、直径にして十里足らず。荒れ山が噴き飛ばす灰を定めて地蔵様は被《かぶ》られたことであろう。如何《いかが》でした、其時の御感想は? 滅却心頭火亦涼と澄ましてお出でしたか? 何と云うても返事もせず、雨が降っても、日が照りつけても、昼でも、夜でも、黙って只合掌してござる。時々は馬鹿にした小鳥が白い糞をしかける。いたずらな蜘《くも》めが糸で頸《くび》をしめる。時々は家の主が汗臭い帽子を裏返しにかぶせて日に曝《さ》らす。地蔵様は忍辱《にんにく》の笑貌《えがお》を少しも崩さず、堅固に合掌してござる。地蔵様を持て来た時植木屋が石の香炉を持て来て前に据えてくれた。朝々其れに清水を湛えて置く。近在を駈け廻って帰ったデカやピンが喘《あえ》ぎ/\来ては、焦《こが》れた舌で大きな音をさせて其水を飲む。雀や四十雀《しじゅうから》や頬白《ほおじろ》が時々来ては、あたりを覗《うかが》って香炉の水にぽちゃ/\行水をやる。時々は家の主も瓜の種なぞ浸《ひた》して置く。散《ち》り松葉《まつば》が沈み、蟻や螟虫《あおむし》が溺死《できし》して居ることもある。尺に五寸の大海に鱗々の波が立ったり、青空や白雲が心《こころ》長閑
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