人前の虫採《むしとり》をしたものだ。最早《もう》其家はつぶれ、弟は東京で一人前の按摩《あんま》になり、兄は本家に引取られて居るが、虫は秋毎に依然として鳴いて居る。家がさながら虫の音に溺《おぼ》れる様な宵《よい》がある。
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[#201ページ、地蔵尊の写真]
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大正十二年九月一日の大震に倒れただけで無事だった地蔵尊が、大正十三年一月十五日の中震に二たび倒れて無惨や頭が落ちました。私共の身代りになったようなものです。身代り地蔵と命名して、倒れたまま置くことにしました。
大正十三年 春彼岸の中日
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ひとりごと
地蔵尊
地蔵様が欲しいと云ってたら、甲州街道の植木なぞ扱う男が、荷車にのせて来て、庭の三本松の蔭《かげ》に南向きに据《す》えてくれた。八王子の在《ざい》、高尾山下浅川附近の古い由緒《ゆいしょ》ある農家の墓地から買って来た六地蔵の一体だと云う。眼を半眼に開いて、合掌《がっしょう》してござる。近頃出来の頭の小さい軽薄な地蔵に比すれば、頭が余程大きく、曲眉《き
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